与えられた場所。
巡ってきた場所。
許された場所。
勝ち取った場所。
ランディ・メッセンジャーが阪神タイガースに加入した時、ここまで頼りになる存在になると誰が予想しただろう。
もしかするとメッセンジャー本人も想像していなかったかもしれない。
メジャーリーガーというブランドに身を包み、順風満帆な選手生活を夢見てきた
アメリカ人が、突如としてFar Eastに活動の場を移す。
当時の心境は本人にしかわからないが、穏やかではなかったはずだ。
自分はメジャーリーグで大輪の花を咲かせたい。
そういう気持ちは、きっとあっただろう。
もしかすると、本人の中にはまだその思いは残っているのかもしれない。
しかし、メッセンジャーに「与えられた場所」は、メジャーリーグには無くなっていた。
マーリンズ、ジャイアンツ、マリナーズと短期間で渡り歩いた道の先は、ロースターの外。
いわゆる日本でいうところの戦力外だった。
28歳という若さで自由契約となったメッセンジャーは、このまま終わりたくないという思いを抱きながら、必要としてくれる場所を探していた。
そんな中、「巡ってきた場所」は思いもよらない場所だった。
デトロイトではない、Nipponのタイガース。
阪神タイガースというチームだった。
その名を聞いたことは、あったのだろうか。
でも間違いなく、迷いはあっただろう。
それでも大きな体の最強助っ人右腕は、大きな夢を届けに日本のタイガースにやってきた。
プロフィール
基本情報
氏名:ランドール・ジェローム・メッセンジャー
国籍:アメリカ合衆国
出身地:ネバダ州リノ
生年月日:1981年8月13日
身長:198 cm
体重:121 kg
血液型:不明
選手情報
投球/打席:右投/右打
ポジション:投手
背番号:54
プロ入り:1999年 (フロリダ・マーリンズ)
一軍初出場:
MLB / 2005年7月22日
NPB / 2010年3月26日
野球経歴
スパークス高校
フロリダ・マーリンズ (2005 – 2007)
サンフランシスコ・ジャイアンツ (2007)
シアトル・マリナーズ (2008 – 2009)
阪神タイガース (2010 – )
成績
投手成績
年 度 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 奪 三 振 | 自 責 点 | 防 御 率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | 26 | 14 | 0 | 0 | 5 | 6 | 0 | 1 | 48 | 44 | 4.93 |
2011 | 25 | 25 | 1 | 0 | 12 | 7 | 0 | 0 | 122 | 48 | 2.88 |
2012 | 30 | 29 | 3 | 2 | 10 | 11 | 0 | 0 | 166 | 55 | 2.52 |
2013 | 30 | 29 | 6 | 3 | 12 | 8 | 0 | 0 | 183 | 63 | 2.89 |
2014 | 31 | 31 | 3 | 3 | 13 | 10 | 0 | 0 | 226 | 74 | 3.20 |
2015 | 29 | 29 | 0 | 0 | 9 | 12 | 0 | 0 | 194 | 64 | 2.97 |
2016 | 28 | 28 | 2 | 1 | 12 | 11 | 0 | 0 | 177 | 62 | 3.01 |
日本通算:7年 | 199 | 185 | 15 | 9 | 73 | 65 | 0 | 1 | 1116 | 410 | 3.20 |
その他成績
獲得タイトル
最多奪三振:2回(2013年、2014年)
最多勝利:1回(2014年)
表彰
月間MVP:1回(2013年7月)
日本シリーズ敢闘選手賞:1回(2014年)
記録
初ホールド:2010年3月30日(対広島)
初奪三振:2010年4月8日(対巨人)
初先発・初勝利:2010年7月11日(対横浜)
初完投勝利:2011年8月6日(対ヤクルト)
初完封勝利:2012年4月17日(対ヤクルト)
年俸推移
年 度 | 推定金額 | 増 減 | 複数年 |
---|---|---|---|
2010 | 6000万 | ||
2011 | 5000万 | ↓1000万 | |
2012 | 12900万 | ↑7900万 | |
2013 | 12300万 | ↓500万 | |
2014 | 25000万 | ↑12700万 | |
2015 | 25000万 | ||
2016 | 30000万 | ↑5000万 |
プレースタイル
長身のオーバースローから繰り出される威力抜群のストレート。
そして何よりも特徴的なのが、その大きな体格とは正反対の小さくて無駄のない投球フォームだ。
滑らかなモーションから豪快に腕を振り、投げ終わったあとは水平方向に高く軸足が上がる。
初動の静けさからは想像ができないほどの力強さがあり、見ている者を爽快にさせてくれるほどだ。
阪神タイガース入団当時は球速重視でコントロールに重きを置いていなかったが、徐々に制球力を軸にした投球にシフトチェンジしている。
それでも、2016年、現在のストレートは平均140キロ後半というスピードがある。
そして何よりも大量失点などの大崩れが少ない。
そんなピッチングを支えているのが、効果的な変化球だ。
右打者、左打者に関係なく投じられるスライダーとフォークボール、そして緩急の効いたカーブが打者のタイミングをずらす。
バッタバッタと打者を空振りにして抑え込むタイプのピッチャーである。
2014年9月2日には、シーズン201奪三振を達成し、歴代外国人史上最多記録を達成した。
2016年シーズンには、在籍期間がバッキーとウィリアムスに並ぶ歴代外国人投手の最長記録となる7シーズンに達した。
そんなメッセンジャーは、入団1年目には中継ぎとして起用されていた。
しかし、球団が望むような目覚ましい成績を残すことはできなかった。
シーズン途中にスタンリッジを獲得したことにより2軍落ちを経験した。
2軍では、先発投手不足だった当時のチーム事情から、先発へ転向するための調整を行った。
夏場に一軍へ昇格すると、初先発で初勝利をあげて先発としての才能の片鱗を見せてくれた。
しかし、その後はなかなか安定しなかった。
苦しい投球をした日があるかと思えば、素晴らしいピッチングを披露したり、また打ち込まれたりと、不安定な投球が続き、5勝6敗、防御率4.93で1年目のシーズンを終えた。
首脳陣をはじめ、球団もファンもマスコミも翌年の契約は無いと予想されていたが、新外国人を調査、獲得する労力との天秤にかけられ、もう1年見てみようという判断になり、メッセンジャーは阪神タイガースで2年目のシーズンを迎えることが決定した。
そんな「許された場所」となった2年目の甲子園のマウンドで、メッセンジャーの助っ人投手最強伝説はスタートすることになる。
2011年は開幕からローテーション入りし、同じく助っ人のスタンリッジと切磋琢磨していった。
しかし、チームは和田豊新監督のもとシーズンを5位で終えた。
そんな中でもメッセンジャーは先発として、 エース級の活躍を見せた。
当初はスタンリッジのほうが格上投手のような印象だったが、結局この年はチームトップとなる12勝を上げて、タイガース投手陣を支えた。
長いイニングを投げることができる投手として、ベンチにとっては信頼できる投手となっていた。
メッセンジャーは2011年だけ偶然、調子が良かったのか。
そんな周囲の声をかき消さんとばかりに、真価が問われた3年目以降も、メッセンジャーは先発投手としてフル稼働した。
ケガをして長期離脱することが少ないのも頼もしい。
まさに折れない先発の大黒柱と言える。
開幕投手にこだわりを持っているのも、タイガースへの愛の現れであり、またその資格も十分にある。
同僚であるタイガース投手陣も、球団関係者や首脳陣も、ファンやマスコミも、すべての人々の中に、開幕投手メッセンジャーに対して、強烈な疑問符が着くことはない。
メッセンジャーが自らの力で「勝ち取った場所」の証明と言える。
プライベート
メッセンジャーといえば、何と言っても無類のラーメン好きなのが有名ですよね。
遠征先には必ず行きつけのラーメン店を発掘して、先発登板の前日は必ずラーメンを食べているそうです。
そんなメッセンジャーが最も好きなラーメン店は横浜の吉村家とのこと。
なんでもラーメン好きになったきっかけが、この吉村家での一杯だったようです。
来日1年目の2010年に、横浜スタジアムで、打たれてショックを受けた試合があり、その夜に通訳さんに連れて行ってもらったのが吉村家。
そこで、濃厚とんこつラーメンにハマってしまったんだとか。
そんなラーメン好きが高じて、選手プロデュースメニューでは「とんこつラーメン」を監修するまでに。
阪神タイガース投手として最長となる在籍期間なのも、日本のラーメンが一因になっている可能性はあるでしょうね。
勝手に個人的総括
5-tools
球速 | 球威 | 変化球 | 制球 | スタミナ |
B | A | A | B | S |
球速
最高球速が156km/hと素晴らしいが、現在の平均球速は147km/hほどと若干スピードは落ちた。
球威
ホームラン被弾率は低く、球速にくわえて球威も高いと言える。
日本在籍の7シーズンで71本のホームランを打たれており、対戦打者数は5040人、被弾率は0.014となる。
これは100人と対戦して、1.4本ホームランを打たれるという計算になる。
変化球
タイトルを獲得するほどの高い奪三振率は、間違いなく変化球のレベルが高い証拠だ。
一級品のスライダーとフォークに加えて、ストレートとのコンビネーションで投げるカーブがアクセントになり、打者を翻弄する。
制球力
あまりフォアボールで大崩れすることはないが、無駄な四球でピンチを招くシーンは見受けられる。
ダイナミックな投球スタイルのわりにはコントロールは良いほうだ。
スタミナ
完投や完封の数も多く、投球回数も多い。
また、ローテーションを中5日で回せるほどのタフネスも持ち合わせているので、スタミナは抜群にある。