プロ野球・阪神タイガースは、長い歴史の中で数多くの名投手を輩出してきた伝統球団です。投手王国とも言われるこの球団において「歴代最強のピッチャーは誰か？」という議論は、ファンの間で絶えません。ここでは通算勝利数などのデータをもとに、阪神タイガースの投手陣の歴史とその頂点に立つ選手を紹介します。
江夏豊（1967年〜1975年）
阪神タイガースにおける「歴代最強投手」と聞いて真っ先に名前が挙がるのが、江夏豊氏です。1966年に阪神に入団し、主に1967年〜1975年まで在籍。彼の特徴は何といっても圧倒的な奪三振力であり、プロ野球史に残る記録を数々打ち立てました。
脅威の401奪三振
なかでも1968年のシーズン成績は驚異的なもので。25勝12敗、防御率2.13、完投26試合し、なんと401奪三振を記録。これは現在も破られていないNPBシーズン最多奪三振記録です。また、彼は阪神時代だけで159勝を挙げ、防御率も通算で2.45という安定感を誇りました。さらに1973年には延長11回ノーヒットノーランという前代未聞の偉業を達成し、試合の最後を自身のサヨナラホームランで飾るという劇的な展開まで演出。このような記録と存在感から、今でも「阪神史上最高のピッチャー」として語り継がれています。
若林忠志（1936年〜1953年）
江夏豊とは違った意味で「最強」と呼べるのが、阪神草創期のエース・若林忠志です。昭和初期に活躍し、1936年〜1953年までの長いキャリアを通じて阪神一筋で登板。通算成績は237勝144敗、防御率1.99と、球団最多勝利記録を保持しています。若林は「七色の変化球」と呼ばれるほど多様な変化球を操る技巧派のピッチャーとして知られています。また、当時の低反発球とマウンド環境でも抜群の安定感を示し、阪神の初期の黄金時代を支えた存在の1人です。
村山実（1969 – 1972, 1988 – 1989）
1960年代に活躍した村山実もまた、阪神の象徴と言える存在です。右腕から繰り出される重い速球を武器に、1959年のデビュー年からエースとして定着しました。通算成績は222勝147敗、防御率2.09。1962年には防御率0.98という驚異的な数字を残しました。
独特なフォーム「ザトペック投法」
村山は、「ザトペック投法」と呼ばれる独特のフォームを持つことでも知られていました。
「ザトペック投法」とは全身を使って闘志むき出しで投げる力強いフォームのことであり、
「人間機関車」と呼ばれたチェコスロバキアの陸上選手、エミール・ザトペックの走法に由来しています。現役引退後は阪神の監督も務めるなど、まさに阪神タイガースという球団の歴史とともに歩んだ存在です。
小山正明（1953年〜1963年）
小山正明は、南海→阪神→大洋と3球団を渡り歩いたものの、阪神でも長く主力として活躍した投手です。プロ通算では320勝という驚異の記録を誇り、これはNPB歴代3位。阪神在籍時にも100勝以上を挙げており、完成度の高い投球術と抜群の制球力で知られました。先発完投型が主流だった時代においても、年間30勝を達成するなど、鉄腕ぶりが際立ちました。小山は抜群の制球力から「投げる精密機械」と呼ばれ、現在でも彼のような投手」はなかなか登場していません。
最後に
今回は、阪神タイガースの投手陣の歴史とその頂点に立つ選手を紹介していきました。阪神の歴代投手たちは、それぞれの時代で異なる個性と才能を発揮し、球団の伝統と誇りを築き上げてきました。剛速球で打者をねじ伏せた者、巧みな変化球で翻弄した者、記録と記憶に残る名勝負を演じた者――その活躍は、今なおファンの心に深く刻まれています。彼らの存在があってこそ、阪神タイガースは「投手王国」と称され、球界を代表する名門球団としての地位を確立しているのです。